婚姻費用の請求について

 夫婦の間に隙間風が吹いて数年になり、相手方とは別居状態になっています。今では生活費も入れないようになりました。相手方と同じ程度の生活水準が保てるような金額の生活費を請求しようと思っていますが、可能でしょうかという質問がありました。

 婚姻費用の請求は、現在必要とする分だけではなく、過去の未払い分に対しても請求できます。この場合の夫婦の分担の割合は、収入の額、資産や負債の有無などのいろんな事情を考慮して決めることになります。具体的な分担額が夫婦の間で決まらないときは、婚姻費用分担の調停または審判を家庭裁判所に申立てることも一案と思います。
 しかしながら、こんな状況であれば相手方はなかなか費用分担の審判があったとしても払わないことが実情かとも思います。
 となれば、離婚の話も出てくるのではないかと思います。

離婚について

 離婚といってもいくつかのパターンがあります。夫婦の話し合いによる離婚は協議離婚といいますが、この協議ができないときは、裁判で決着をつけることになります。いきなり離婚の裁判ができるのではないのです。先ずは、この調停の申立てをしなければなりません。夫婦関係調整調停を家庭裁判所に申立てします。これを調停前置主義といっています。その調停でうまく話し合いがつけば、夫婦が離婚することについて調停調書が作成され、離婚の効果が生じることになりのです。調停が設立日から10日以内に、市区町村役場へ離婚の届出をすることになります。これを調停離婚といいます。

 ところが、不幸にして、調停の席で中々双方の言い分に食い違いがあり歩み寄りができないときは、調停は成立しないことになったり、又は、調停に代わる審判についての効力が失われたときに、家庭裁判所に離婚の裁判を起こすことになります。ところで、裁判離婚の場合には、法律で離婚原因が定められており、その離婚原因がないと訴えた方は認められないことになります。この裁判で離婚する方法を裁判離婚といいます。
 そこで、民法第770条には次のように規定しています。
 1.配偶者に不貞行為があった場合
 2.配偶者が悪意で遺棄されたとき
 3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
 4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
 5.1~4以外に婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき

 裁判になったとして、その離婚原因が相手方の不倫が原因で離婚することになったとすれば、相手方や不倫の相手に慰謝料を請求することになります。ただし、相手方が不倫を始めた当時、すでに夫婦関係がが実質的に破綻していたようなときは、慰謝料の支払いを求めることは困難だと思います。また、不倫相手が、相手方が結婚中であることを知って不倫関係になったのであれば請求できると思いますが、相手方が独身と偽り不倫相手が過失なく信じていたときは請求は難しいと思います。
 なお、不倫は不法行為ですので、原則として離婚後3年を過ぎたときには、離婚に伴う慰謝料としての請求はできません。

 それでは、仮に慰謝料がとれないとしても、財産分与はどうなるのか、離婚後も財産分けは請求できるのかというご質問も多く寄せられます。
 離婚した後でも、相手方が応じれば何時でもできますが、家庭裁判所への調停や審判の申立ては、離婚してから2年間は請求ができますが、それ以上はできないのでご注意ください。財産分与とは、公平の観念から、結婚している間に夫婦が協力して築いた財産を離婚を期に公平に分け合うことです。土地・建物、定期預金等は名義が夫婦の一方のみになっていても、分与の対象にすることは可能です。ただし、相続した財産など夫婦が協力して築いた財産に当たらないものは財産分与の対象にはなりません。それでは、例えば、土地については親から相続したものだから分与しなくて良いのかというと、夫婦で築いた建物のみを分与しても、土地は固有財産だと主張しきれるかというと、なかなか、そうもいかず総合的に判断して土地、建物は誰が引き継ぐと話し合いで決まっていくことが多いと思います。

親権について

 離婚の際に子どもがいる場合には、どのような点に注意すべきですか?

 子どもの福祉を第一に考え、親権者や監護者を決めなければなりません。子どもの養育費、面接交渉の方法を検討することも必要です。
 未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、夫(父)、妻(母)のいずれかを親権者と定めなければなりません。親権者は、子どもの財産管理を行うとともに、子どもが親権者の同意を得ないで結んだ契約を取り消すことができます。通常、夫婦の話合いで決めることになりますが、夫婦間で意見が一致しなければ、審判や判決で決められることになります。
 なお、親権者とは別に、子どもの監護教育を行う監護者を決めることもできます。一般的には、親権者が監護教育も行うことになりますが、他方の親はもちろん、第三者(祖父母、福祉施設の長など)を監護者とすることも可能です。
 子どもの養育費は、子どもと生活を共にしていない親が、子どもと生活を共にしている親に、毎月一定額を支払う方法が一般的です。親の意見が一致しなければ、審判や判決で決められます。
 子どもと生活を共にしていない親には、子どもと会って交流する権利(面接交渉権)が認められます。面会の回数、方法、場所、面会時間、宿泊の可否、連絡の取り方、学校行事に参加することを認めるかどうか、などを決めておくのが一般的です。

子供の氏(姓・名字)について

 親が離婚すると、子どもの氏(姓・名字)や戸籍はどうなりますか?

 結婚の際に氏(姓・名字)を変えた親は、原則として、離婚すると旧姓に戻ります(復氏)。他方、子どもの氏は、もとのままです。
 そこで、親の離婚にあたり、子どもの戸籍や氏を変える方法として、家庭裁判所に子の氏の変更許可の申立てをすることができます。家庭裁判所が氏の変更を許可した後、市区町村役場で氏の変更届をすると、子どもの氏が変更され、旧姓に戻った親の戸籍に入ることになります。この場合、氏の変更届は、原則として子ども自身が行うことになりますが、子どもが15歳未満の場合は、親権者が行います。
 なお、結婚に際して氏を変更した親が、婚姻中の氏を離婚後も引き続き使用する場合(婚氏続称)でも、子どもは元の戸籍(結婚時に氏を変更しなかった親の戸籍)に入ったままです。したがって、同じように、子の氏の変更許可を得なければ、婚氏続称の手続をした親の戸籍に入れることはできません。
 また、父母が離婚し、いずれか一方の親が親権者となった場合、子どもの戸籍に「親権者」の氏名が記載されることになります。

親権者の変更について

 親権を持つ元夫(元妻)が、きちんと子育てをしていません。私が親権者になることはできますか?

 離婚などで父母の一方が親権者となった場合、家庭裁判所は、子どもの利益のために必要であると認めるときは、子の親族からの請求により、親権者を他の一方に変更することができます。
 親権者の変更は、必ず家庭裁判所の調停・審判によらなければなりません。審判においては、双方の親の経済力、居住環境、心身の健康・性格、子どもに対する愛情、養育能力、監護の継続性など(親側の事情)と、子どもの年齢や心身状況、生活環境の継続性、子どもの気持ちなど(子ども側の事情)を総合的に考慮して、親権者の変更が子どもの利益のために必要かどうかが判断されます。
 婚姻中の不倫や離婚後の男女関係などの素行の問題については、そのことだけで当然に親権者として不適格とされるわけではありません。その素行不良が子どもの監護状況に悪い影響を及ぼしているか、子どもと親の心理的つながりの状況などから、親権者として不適格であると判断された場合に限って、親権者の変更が認められます。

年金分割の請求について

 離婚した後でも、年金分割の請求することはできますか?

 原則として、離婚をした日の翌日から2年を経過するまでは、年金分割の請求をすることができます。
 「年金分割」とは、離婚に際し、分割の対象となる期間に納付した年金保険料の額に関する記録を2つに分け、分割を求めた夫(妻)は、自分が納めた年金保険料の記録と、分割してもらった記録とに基づいて計算された額の年金を受け取ることができる、という制度です。なお、分割の対象となる年金記録は、厚生年金や共済年金の報酬比例部分に限られ、基礎年金部分は影響を受けません。
 年金分割には2種類あり、一つは「合意分割」、もう一つは「3号分割」と呼ばれるものです。

 合意分割は、平成19年4月1日以降の離婚に適用され、「3号分割」の対象となる期間を除く婚姻期間の年金記録につき、夫婦間の話合いや家庭裁判所の審判で定められた割合に従って分割を行うものです。他方、3号分割(強制分割)は、平成20年4月1日以降の離婚に適用され、その日以降の婚姻期間のうち、第3号被保険者であった期間の年金記録につき2分の1の割合で分割を行うものです。
 合意分割では、夫婦間の話合いにより決めた割合で分割請求する場合、その内容を公正証書にして日本年金機構に提出しないといけません。
 また、家庭裁判所の審判で定められた割合で分割請求する場合、離婚をした日から2年経つ前に、家庭裁判所に調停や審判の申立てをします。これらの手続の中で分割の割合が定められた場合は、その調停が成立し、あるいは審判が確定した日から1か月以内であれば、年金分割の請求をすることができます。
 なお、合意分割は、離婚後、2年を経過すると年金分割の請求権はなくなります。

 次に、3号分割では、相手方が行方不明である場合、行方不明になってから3年経った後でなければ、年金分割を請求することができません。
 なお、夫婦の双方が事実上離婚状態にある(離婚届は提出していないものの、夫婦としての共同生活が営まれておらず、離婚したと同様の事情にある)と認めていることを理由とする3号分割では、請求の期限が定められていません。

 現在、専業主婦は夫が厚生年金に加入していれば、妻は第3号被保険者ということで、保険料は納めていなくても、国民年金加入者となっています

 専業主婦だった妻は離婚した場合、夫の厚生年金は受け取ることができませんから、国民年金しか受け取ることができません

 家事や育児のために頑張っても、国民年金しか入ることができなかった女性は、離婚してしまうと元夫は厚生年金を受け取れるのに対して、元妻は国民年金のみ・・・。

 この不平等を解消する為に、年金改正に「年金分割」が盛り込まれたわけです

■年金分割とは、婚姻期間中の年金保険料は、夫婦共同で支払ったとみなし、離婚時に分割するというものです

※専業主婦の場合⇒厚生年金保険料の半分は妻が払ったものとして、将来の年金額が計算されます
※共働きの場合⇒足して2分の1づつ、または、協議で決めるようになる模様

 年金分割が認められるのは平成19年4月以降に離婚した場合のみです。
 夫の合意が必要なので、合意が得られない場合は裁判所に申立てることになります。
 夫がいったん受け取った年金を送金する仕組みで、相手が承諾し、送金してくれなければもらえないケースもでてきます。
 分割割合は上限2分の1です

 2006年10月から、妻の独身時代に払っていた保険料、婚姻中の第3号被保険者期間を勘案し、年金を夫と分割した場合の額を通知してもらえるサービスが始まってます。
 離婚前なら申請者のみへの回答になるので、相手には知られない仕組みになっています
→問い合わせ先は日本年金機構です

 事実婚であっても届出を出して相手に扶養されていると認められれば第3号被保険者となって分割対象となります。

 平成20年4月からは、合意がなくとも自動的に分割されるようになりましたが、対象となるのは平成20年4月以降の第3号被保険者期間のみでそれ以前の分については話し合いで決めることになります
 自動分割は共働きの場合は対象外です。

慰謝料や養育費と同様、老後の大切な生活資金です。
離婚予備軍の方は、ぜひとも知っておきたい事柄ですね